二年連続日本一と世界最高米認定を携え次の舞台へ
会津猪苗代カンダファーム『ゆうだい21』のリブランディング
「奇跡のお米」と呼ばれる品種『ゆうだい21』で、国内最大規模の米コンクール最高賞を2年連続受賞した会津猪苗代カンダファーム。2026年度にはギネス世界記録「世界最高米®」の原料米にも認定されました。日本一の品質を次の価値につなげるため、農園ロゴと商品デザインを刷新。 「異次元のフィールドヘ」を掲げ、新たな挑戦を始めています。
豊かな産地と作り手の技を、適正な価値として届ける
良い商品が生まれる背景には、作り手の熱い想いとこだわりがあります。会津磐梯山と猪苗代湖に囲まれた標高500m以上の田園で、毎年10パターン以上の試験栽培を重ねてきたカンダファーム。その成果が日本ーという形で認められた今、プレミアム米『ゆうだい 21』は高級路線へと進みます。手間とコスト、技術、そして猪苗代の自然が生む価値を正面から伝え、農業の次の可能性を示そうとしています。
日本一のその先へ 米農家に夢のある未来を
会津猪苗代カンダファーム
代表 神田 忍さん
農業と民宿を営む家庭に生まれ、大学卒業後は東京のコンサルティング会社、築地市場の卸会社、福島の複合機販売会社で勤務。30歳で就農した直後に東日本大震災と原発事故に見舞われ、風評被害で打撃を受けた経営を立て直すため直販に挑戦する。毎年複数の試験区を設け、土づくり、肥料、水管理、収穫時期を研究。2024年と2025年の「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」で国際総合部門金賞を連続受賞。現在は、品質を適正な価格で届けるブランドづくりに取り組んでいる。
世界最高米® プレミアム米 ゆうだい21
宇都宮大学の農場で偶然発見された稲穂の株をもとに開発され、「奇跡のお米」とも呼ばれる品種です。大粒で粘りと弾力に優れ、かむほどに強いうま味と甘みが広がります。冷めても食感と味わいを保ちやすく、おにぎりや弁当にも好相性。カンダファームの作るお米は、2年連続の国際総合部門金賞と2026年度ギネス世界記録「世界最高米®」原料米認定により、その実力が広く示されました。
※「世界最高米®」は東洋ライス株式会社の登録商標です。
日本一になっても
ゴールはここではないと思った
30歳で就農後、カンダファームの神田忍さんが掲げていた目標は、『ゆうだい21』で日本ーになることだった。当時はまだ「夢のような目標」だったという。ところがその夢は予想より早く実現する。2024年に開かれた第26回「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」で、最高賞となる国際総合部門金賞を受賞。翌2025年の第27回大会でも同じ金賞に選ばれ、二年連続日本一を成し遂げた。しかし、受賞後に直面したのは、「日本一と伝えるだけでは、米は思ったほど売れない」という現実だった。品質を高めるだけでなく、その価値をどう伝え、選んでもらうか。受賞は味を判断する有力な指標であっても、商品の背景や作り手の価値観まで自動的に伝えてはくれない。神田さんは今後の経営を見据え、農園全体のリブランディングに踏み切った。
手間とコストに見合う
適正な価値を商品に
カンダファームは、手に取りやすい価格で味を追求する「究極の普段食」の米を引き続き販売する。その一方で、日本ーとなった『ゆうだい21』は、新たに高級路線で展開する。従来の「手頃なプレミアム米」から一歩踏み出す判断である。「おいしいと言ってもらうために、手間もコストもかけています。それに見合う価値として評価してもらいたいと考えました」(神田さん)。米の価格は市況に左右されやすく、生産者がかけた経費や労力とは別の理由で上下する。神田さんは、安く売るための米ではなく、最高の味を目指して必要な投資を重ねた米だからこそ、価値を自ら説明する必要があると考えた。細かな栽培管理と年々の改良によって生み出した品質を、農家自らが責任を持って価格に反映することに挑む。価格改定は、品質の理由まで届けるブランドヘの転換なのだ。

国内最大規模の大会で
2年連続の国際総合部門金賞
「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」は、約5000点の米が出品される国内最大規模の品評会である。その点に位置する国際総合部門で、カンダファームの『ゆうだい21』は2年連続の金賞を獲得した。その実績は、2026年度ギネス世界記録「世界最高米」の原料米認定にもつながった。この記録は、食味に優れた原料米を厳選してブレンドし、世界で最も高価な米として販売する取り組みに対する認定である。最高価格という記録は、おいしさに加え、米の価値をどう社会に提示するかを問う、今回の挑戦とも重なる。『ゆうだい21』は、猪苗代の地で積み上げた栽培技術が生んだ、世界に示せる米となった。
新たなブランドコンセプト
「異次元のフィールドへ」
リブランディングにあたり、神田さんはデザイナーと対話を重ねた。そこで言語化されたのが、「異次元のフィールドヘ」というブランドコンセプトである。この言葉の「フィールド」には、二つの意味が込められている。一つは、会津磐梯山と猪苗代湖が育む田園という、猪苗代ならではのフィールド。もう一つは、昨年の自分を超え、さらに高い品質へ進むための未知のフィールドである。「去年の米より今年の米をおいしくする。それをずっと続けていきたい」。毎年1回しか答えを得られない米作りだからこそ、わずかな差を拾い、精度を上げ続ける覚悟を表している。


猪苗代湖の白鳥が表す
自然と同調する米作り
新しいシンボルマークに描かれたのは、猪苗代湖を象徴する白鳥だ。白鳥は、おいしい水と豊かな自然を求めて猪苗代湖へ飛来する。ロゴの白鳥は羽ばたいているのではなく、羽を畳み、水面に身を委ねるような姿で表現されている。そこに込められたのは、自然と戦うのではなく、自然に同調するという考え方である。暑い年も、雨が多い年もある。人が天候を変えることはできないが、田の状態を読み、水や肥料、作業時期を調整することはできる。農家がその年の環境を見極め、稲にとって最も良い条件を整える。白鳥の静かな姿は、猪苗代の風土を受け入れながら、その力を最大限に引き出すカンダファームの姿勢を映し出している。
日本一の農家の方法でも
同じ答えは出なかった
この数年、神田さんは冬に全国の優れた米農家を訪ね、栽培方法や肥料、収穫時期などの意見交換を重ねてきた。ある年には、何度も日本一に輝いた農家の手法を、肥料も作業時期も含めて徹底的に再現した。その結果は、予想に反して過去最低の食味だったという。土の状態、水、気温などの環境が違えば、同じ肥料を使い、同じ日に稲を刈っても結果は同じにはならない。その失敗は、技術を学ぶだけでは得られない大きな気づきとなった。神田さんは米作りの原点に立ち返った。 「猪苗代の田んぼに合う答えは、ここで作り出さなければならない」。他産地の成功例はそのままの正解ではなく、自分の田では何を変えるべきかを考えるための材料である。全国の農家との交流は、猪苗代の米作りを深めるための新たな研究法になっている。


数値だけに頼らず
果物のように旬を見極める
特に大きな変化が、収穫時期の見極め方である。稲刈りの時期は、出穂後の毎日の平均気温を足した「積算気温」が一つの基準とされる。神田さんも数値を重視してきたが、他の優れた農家から、稲穂に残る青い粒の割合を見て収穫時期を決める考え方を学んだ。教科書の基準は、収量と品質のバランスをとるための目安である。しかし、食味を最優先する『ゆうだい21』にとって、最もおいしい瞬間は別の場所にあるかもしれない。ブドウなどの果物に、食感や甘さが最も充実する収穫適期があるように、米にも食味から見た旬があるはずだと考えたのだ。神田さんは田んぼの稲を見て「今日だ」と判断する収穫を試した。その米が、2025年大会での二年連続金賞につながった。数値を否定するのではなく、データと観察の両方からその年の答えを導き出している。
3年から5年で育てる
農家が夢を描けるブランド
日本ーは、カンダファームにとって終着点ではない。「今年1年では完成しないと思っています。3年から5年くらいの時間をかけて、描いているブランドに近づけたいですね」(神田さん)。新たな理想は、最初から広く受け入れられるとは限らない。神田さん自身、初年度は苦戦する可能性も見込んでいる。それでも、味を高め、理由を伝え、信頼を積み上げることでしかブランドは育たない。新しい価格とデザインは、結果の見えにくい長期戦の始まりである。
品質はすでに日本ーという評価を得た。それでも神田さんは、「去年より今年、今年より来年」と改良を続ける。米作りで新しい方法を試せるのは年に一度。冬に他の農家と話すたびに、春に試したいアイデアが生まれるという。風土を見つめ、データと稲の表情を読み、わずかな差を一つずつ拾う。「異次元のフィールドヘ」という言葉の先にあるのは、作り手が米の価値を育て、消費者がその理由とともに選べる未来である。カンダファームの新たな挑戦は、猪苗代の田んぼから始まっている。

ショップ紹介

会津猪苗代カンダファーム
〒969-3121
福島県耶麻郡猪苗代町字横マクリ570-1
農家民宿『会津猪苗代の宿 神田荘』を1959年に開業。農業開業は1930年頃までさかのぼり、現在の代表が5代目となる。30haの稲作農地で6種類の米を生産。普段食として手軽に味わえる価格で、最高品質の米作りを追求することが栽培方針である。現代表が10年をかけて独自ブランド米の研究に取り組み、各種のコンテスト・品評会で多数の好成績を残している。
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